ウイルス変異株の出現はがん発生の機序と似ている

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新型コロナウイルスがヒトと共存する戦略(生田和良、バムサジャーナル 37(2): 13-19, 2025)

この記事を元に、以下の5点について、わかりやすい記事としてまとめました。

SARS-CoV-2は、人から人にうつっていくために、絶えず感染・増殖サイクルを繰り返している。この過程で、致死性を下げる一方で感染力を高めることで、その結果として人類社会から排除されずに「共存」するための戦略をとることができた。

なぜなら、
ウイルスにとって最大の目的は「宿主内で増え、次の宿主へ移ること」であり、宿主を急速に死に至らしめることは、結果的に自らの生存を不利にする。過去のコロナウイルスの歴史を見ても、ヒト社会に定着したウイルスは、例外なく病原性を低下させてきた。

たとえば、
SARS-CoV(2002年)は致死率約10%と高く、感染者の多くが死亡し、死亡しなかった場合は入院し、隔離状態となり、人から人への伝播例は極力抑えられた結果、最終的にはヒト社会から消滅した。一方、SARS-CoV-2は世界中に急速に拡散したが、変異株の出現とともに病原性は低下し、現在では感染症法上も5類へ移行している。これは、風邪の原因となっている4種のヒトコロナウイルス(おそらく、最初は病原性は高かった思われる)と同じ道筋である。

以上、
新型コロナウイルスは「より弱く、より広く」感染することで、人類社会に適応し続けている。現在の問題は、このように弱くなっても、体力(免疫の反応性)が大きく低下した超高齢者にとっては脅威となっている点である。



ウイルス変異株の出現は戦略的進化ではなく、複製時に生じるランダムな「コピーミス」の結果である。

なぜなら、

居留守は、感染した細胞内で複製して大量の子ウイルスを生産する必要があるが、遺伝情報をRNAに保有しているRNAウイルスは複製エラー(読み間違い)率が高く、大量に複製される過程で無数の変異体が生まれる。その大半は致命的な領域に読み間違いが入り、増殖できずに淘汰される。しかし、ごく稀には環境条件に適応した一部のみが生き残る。

たとえば、
ワクチン接種や抗ウイルス薬の使用によって圧力がかかると、それを回避できる変異(エスケイプ変異)を偶然持ったウイルスが選択される。これは「ヒトが変異株を作り出している側面があるという、示唆的な指摘でもある。

以上、
変異株の誕生は不可避であり、それはウイルスの意思(もちろんウイルスには考える力は持ち合わせていない)ではなく確率論的現象である。



ウイルス変異株の出現と、がん細胞の発生は、いずれも「コピーエラー」という同一原理に基づいている。

なぜなら、
細胞分裂やウイルス複製では、膨大なDNA/RNAコピーが行われ、その過程でランダムなエラーが避けられない。通常は免疫や修復機構によって排除されるが、まれに生き残るものが問題となる。

たとえば、
人の体内では、健康な人でも1日に約5,000個のDNA複製エラーが生じているとされる。そのほとんどは排除されるが、免疫監視をすり抜けた細胞が、最終的にがんとして顕在化する。これは、変異ウイルスが選択される構図と酷似している。

以上、
「がん」も「変異ウイルス」も、生命活動に内在するコピーエラーの延長線上にある現象である。



生ワクチンは、ウイルスが自然に弱毒化する性質を人為的に利用した、極めて合理的な医療技術である。

なぜなら、
異なる宿主細胞(時に、本来の宿主ではない、別の細胞を使うことも)で継代培養(感染後に産生されたウイルスをまた次の細胞に感染するというサイクルを繰り返す)を行うと、ヒトへの病原性が低く、しかし感染b高率と生産量が上がることが一般的だが、免疫原性を保持したウイルス株が選択される。この仕組みは自然界で起きている弱毒化と同じ原理を、人為的に実施したものである。

たとえば、
麻しん、風しん、ポリオ、水痘ワクチンはいずれも継代培養によって弱毒株を作出している(実際、遺伝子レベルで弱毒化の根拠も明らかにされている)。特に水痘ワクチン(岡株)は、日本発で世界に普及した成功例で、この開発者は大阪大学名誉教授、高橋理明博士である。このワクチンは、小児の水痘に加えて、今では高齢者の帯状疱疹ワクチンとしても使われている。

以上、
生ワクチンは「ウイルスの弱点」を熟知した上で成立した、人類の知恵の結晶である。



変異株の出現を過度に恐れるのではなく、「病原性」と「感染力」を分けて評価すべきである。

なぜなら、
多くの変異株は感染力を高める一方で病原性を下げている。死亡リスクが高いのは主に高齢者や免疫不全者であり、ウイルスそのものの凶悪化とは必ずしも一致しない。

たとえば、
日本では新型コロナ関連死の約96%が65歳以上である一方、社会全体としては重症化率・致死率は明らかに低下している。これはインフルエンザと同様、共存型感染症へ移行していることを示唆する。

以上、
今後求められるのは「恐怖を煽る情報」ではなく、科学的根拠に基づいた冷静なリスク理解である。

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