*本原稿に必要な資料・情報はGemini3に相談しながら作成しています。
2020年3月2日:専門家会議「自治体向け資料」
この時期、東北大学の押谷仁教授らが中心となり、国内のクラスター(集団感染)を分析した結果が公表されました。
- 示された内容: 「換気が悪い」「人が密に集まる」「近距離で会話する」という条件が揃うと、一人の感染者から次々に感染が広がる一方で、外気との入れ替えがある環境では、感染がほとんど広がっていないという対比データが示されました。
- 特徴的な記述: 「スポーツジム」「屋形船」「展示会」「ライブハウス」など、**密閉された空間(換気なし)**での感染事例が列挙され、屋外や換気の良い場所との伝播率の差が強調されていました。これが後の「3密」の根拠となったようです。
「18.7倍」という衝撃的な数値
2020年春頃の厚生労働省クラスター対策班の分析として、以下のようなデータが報告されていました。
- データ内容: 「換気の悪い密閉空間」における感染リスクは、それ以外の環境に比べて18.7倍高いという研究結果です。この資料を見た時に、それまであいまいな認識(「伝播ルート」の主流は「飛沫感染」なのか「エアロゾル感染」)だったが、やっぱりそうだったのか、と思った記憶があります。
- 当時の意図: 「換気さえ良ければ、これほどまでにリスクは下がる」という強いメッセージでしたが、いつの間にか対策としての「換気」の声がなくなっていき、厚労省のポスターも手洗いとアルコール消毒が中心になっていきました。

これは、当時、このデータに大変興味をもち、その資料の中の数字をもとにこのスライドを作成し、セミナーでしばしば使った記憶があります。しかし、なぜか、その時の厚生労働省クラスター対策班の資料が探せなくなりました。
これにはいくつか理由が推測されます。
- 「3密」への統合: 詳細なグラフやクラスター図よりも、わかりやすい「3密」というスローガンが優先され、元の分析資料は事務連絡のPDFの中に埋もれてしまいました。
- オミクロン株以降の更新: 2022年以降、ウイルスの感染力が極めて強くなったことで、2020年当時の「18.7倍」といった特定の数値が現状に合わないと判断され、最新の知見(個人の判断など)に差し替えられた可能性があります。確かに、この頃から、変異株の感染力が怖いというメッセージばかりがあちこちから聞こえるようになりました(実際には、感染力は上がりましたが、病原性は低下していたのですが)。
なぜこの「18.7倍」のメッセージが消えたのか?
これには、日本特有の「対策のすり替え」が影響していると考えられます。
- 「3密」の簡略化: 「換気をしよう(環境改善)」というメッセージが、「密を避けよう(行動制限)」に統合されと思われる。その結果、本来セットであるべき**「換気が良ければ密集してもリスクは低い」**という視点が抜け落ちてしまいました。
- マスクへの依存: 空調設備の改善や窓開けはコストや手間がかかります。一方で、マスクは安価で「対策をしている姿」が目に見えます。行政やメディアは、より管理しやすい「マスク」を強調するようになったのだと思われます。
- エアロゾルの軽視: 18.7倍という数値は、当時すでに欧米では飛沫から空中に漂う微粒子(エアロゾル)の存在を前提とした意識改革に切り替わっていました。しかし、日本では長らく「飛沫(1〜2mで落ちる)」という説明が主流だったため、広範囲の空気を入れ替える「換気」の重要性が、マスクの陰に隠れてしまったようです。
以上が、いまの日本のマスク社会が根強く残っている背景ではないかと思われます。



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