介護施設・高齢者施設における疥癬の現状と課題

感染対策

疥癬(かいせん)は、ヒゼンダニという体長0.3〜0.4mmほどの小さな寄生虫が皮膚に入り込んで発症する感染症です。

強いかゆみが特徴で、特に免疫力が低下している高齢者にとっては、生活の質を大きく損なう厄介な問題です。

一般家庭であれば大きな問題にはなりにくいのですが、介護施設や高齢者施設では、入浴介助やオムツ交換など、「肌と肌がふれやすい環境」があり、一度持ち込まれると広がりやすいという課題があります。

最近の特徴として、従来よりも治りにくい「角化型疥癬」が増えている点があります。

角化型は皮膚が厚い鱗状になり、ダニの数が非常に多いため、通常の疥癬より感染力が強く、早期発見と隔離が欠かせません。また、認知症の方では「かゆい」と訴えにくく症状の気づきが遅れがちで、気づいた時には複数の入所者に広がっているケースもあります。

治療については、イベルメクチン内服薬や外用薬(フェノトリン、硫黄製剤など)が有効ですが。しかし「治療に協力できるか」「薬をきちんと服用できるか、またしっかり塗れるか」「環境の消毒が徹底できるか」といった課題があり、施設側の負担は小さくありません。

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とくにベッド・衣類・タオルなどのリネン類の管理が重要で、洗濯や熱処理を施設全体で行う必要があります。こうした環境整備の手間が“長引く理由”のひとつです。

予防の基本は、①早期発見、②接触場面での感染対策、③環境の衛生管理です。

具体的には、介護スタッフの定期的な皮膚チェック、夜間のかゆみの訴えの記録、症状が疑われた際の迅速な皮膚科受診。また、角化型が発生した場合は、接触介助を担当するスタッフに手袋・ガウンの着用を徹底し、入所者の居室区域を分けることが大きな感染拡大防止につながります。

高齢者の立場から見ると、「自分が入所した時にうつるのでは」という不安はよく分かります。

ただ、実際には多くの施設で感染管理のマニュアルが整備され、スタッフ教育も進んでいます。疥癬が起きても、早期に気づけば施設全体に拡大することは少なく、治療も以前より選択肢が増えてきています。

入所前に「その施設の感染対策の取り組み」を確認しておくことで、不安を軽減できます。

疥癬は決して“怖い病気”ではなく、知識と対応さえあれば十分コントロールできる感染症です。

高齢者が安心して暮らすためにも、施設側と家族が正しい理解を共有し、日ごろから皮膚の変化に気づける環境を整えていくことが大切です。

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